水の巻 · Livro da Água 五輪書 · Capítulo 3 de 6
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水の巻 · Livro da Água

一 序

兵法二天一流の心水を本として利方の法を行ふによつて水の巻として一流の太刀筋此書に書顕すもの也此道いづれもこまやかに心の儘には書分がたし縦ことばつづかざると云ふ共利は自ら聞ゆべし此書に書付たる所ことごと一字一字にて思案すべし大形に思ひては道のちがふ事多かるべし兵法の利に於て一人と一人との勝負の様に書付たる所なり共万人と万人との合戦の利に心得大きに見立所肝要也此道に限つて少なり共道を見違へ道の迷ひ有りては悪道へ落るもの也此書付計を見て兵法の道には及事に非ず此書に書付たるを我身にとつて書付を見ると思はずならふと思はずにせものにせずして則ち我心より見出したる利にして常に其身になつて能々工夫すべし

二 一 兵法 心持の事

兵法の道に於て心の持様は常の心に替る事なかれ常にも兵法の時にも少も替らずして心を広く直にしてきつくひつぱらず少もたるまず心のかたよらぬ様に心をまん中におきて心を静にゆるがせて其ゆるぎのせつなもゆるぎやまぬ様に能々吟味すべし静なる時も心は静ならず何とはやき時も心は少もはやからず心は体につれず体は心につれず心に用心して身は用心せず心のたらぬ事なくして心を少もあやまらさずうへの心はよわく共そこの心をつよく心を人に見分られざる様にして小身なるものは心に大きなる事を残らず知り大身なるものは心に小さき事を能知りて大身も小身も心を直にして我身のひいきをせざる様に心を持事肝要也心の内にごらず広くして広き所へ智恵を置べき也智恵も心もひたとみがく事専也智恵をとぎ天下の理非を弁へ物毎の善悪を知り万の芸能其道其道をわたり世間の人に少しもだまされざる様にして後兵法の智恵となる心也兵法の智恵に於てとりわきちがふ事有もの也戦の場万事せはしき時なれ共兵法の道理をきはめうごきなき心能々吟味すべし

三 一 兵法 の身なりの事

身のかかり顔はうつむかず あをのかず かたむかず ひずまず目をみださず ひたいにしはをよせずまゆあいにしわをよせて目の玉のうごかざる様にしてまたたきせぬ様に思ひて目を少しすくめる様にしてうらやかに見ゆるかほ鼻すぢ直にして少しおとがひを出す心也首はうしろのすぢを直にうなじに力を入れて肩より総身はひとしく覚え両の肩をさげ背すぢをろくに尻を出さずひざより足先まで力を入て腰のかがまざる様に腹をはりくさびをしむると云ひて脇差のさやに腹をもたせて帯のくつろがざる様にくさびをしむると云教有り総て兵法の身に於て常の身を兵法の身とし兵法の身を常の身とする事肝要なり能々吟味すべし

四 一 兵法 の 目付 と云事

目の付様は大きに広く付る目也観見二ツの事観の目つよく見の目よわく遠き所を近く見近き所を遠く見る事兵法の専也敵の太刀を知り聊敵の太刀を見ずと云事兵法の大事也工夫有べし

此目付ちひさき兵法にも大きなる兵法にも同じ事也目の玉動かずして両脇を見る事肝要也箇様の事いそがしき時俄には弁へがたし此書付を覚え常住此目付になりて何事にも目付の替らざる所能々吟味有べきもの也

五 一 太刀の 持様 の事

太刀の取様は大指人さしを浮べる心に持たけ高指しめずゆるまず くすし指小指をしむる心にして持也手の内にはくつろぎの有事悪し敵をきるものなりと思ひて太刀を取るべし敵をきる時も手の内に替りなく手のすくまざる様に持べしもし敵の太刀をはる事 うくる事 あたる事 おさへる事有り共大指人さし指斗を少替る心にして兎にも角にもきると思ひて太刀を取るべしためしものなどきる時の手の内も兵法にしてきる時の手の内も人をきると云手の内に替る事なし

総て太刀にても手にてもゐつくと云事を嫌ふゐつくはしぬる手也ゐつかざるは生る手也能々心得べきもの也

六 一 足つかひの事

足の運び様の事つま先を少うけてきびすを強く踏べし足遣ひはことによりて大小遅速は有共常にあゆむが如し足に飛足 浮足 ふみすゆる足とて是三ツ嫌ふ足也此道の大事にいはく陰陽の足と云是肝心也陰陽の足とは片足斗動かさぬもの也きる時 ひく時 うくる時迄も陰陽とて右左右左踏む足也返す返す片足踏事有べからず能々吟味すべきもの也

七 一 五方 の構の事

五方の構は上段 中段 下段 右のわきに構ふる事左のわきに構ふる事是五方也構五ツに分つと云へ共皆人をきらん為也構五ツより外はなし何れの構なり共かまふるは思はずきる事也と思ふべし構の大小はことにより利にしたがふべし上中下は体の構也両脇はゆうの構也右左の構うへのつまりてわき一方つまりたる所などにての構也右左は所によりて分別有此道の大事に曰く構のきはまりは中段と心得べし中段構の本意也兵法大きにして見よ中段は大将の座也大将につきあと四段の構也能々吟味すべし

八 一 太刀の道と云事

太刀の道を知ると云事は常に我さす刀をゆび二ツにて振る時も道すぢ能知りては自由に振もの也太刀をはやく振らんとするによつて太刀の道ちがひて振がたし太刀は振りよき程に静に振る也或は扇或は小刀など遣ふ様にはやく振らんと思ふによつて太刀の道ちがひて振がたし夫は小刀きざみといひて太刀にては人のきれざるもの也太刀を打さげてはあげよき道にあげ横に振りては横にもどりよき道へもどしいかにも大きにひぢをのべて強く振る事是太刀の道也我兵法の五ツの表を遣ひ覚ゆれば太刀の道定まりて振よき所也能々鍛錬すべし

九 一 五ツのおもての次第 第一の事

第一の構中段太刀先を敵の顔へ付て敵に行相時敵太刀打かくる時右へ太刀をはづして乗り又敵打かくる時きつさきかへしにて打うち落したる太刀其儘置又敵の打かくる時下より敵の手はる是第一也総別此五ツの表書付る斗にては合点なりがたし五ツの表のぶんは手にとつて太刀の道稽古する所也此五ツの太刀筋にて我太刀の道をも知り如何様にも敵の打太刀知るる所也是二刀の太刀の構五ツより外に有らずと知らする所也鍛錬すべきなり

一〇 一 おもての第二の次第の事

第二の太刀上段に構へ敵打かくる所一度に敵を打也敵を打はづしたる太刀其儘置きて又敵の打所を下よりすくひ上て打つ今一ツ打も同じ事也此表の内に於ては様々の心持色々の拍子此表のうちを以て一流の鍛錬をすれば五ツの太刀の道こまやかに知つて如何様にも勝所有稽古すべき也

一一 一 おもて第三の次第の事

第三の構下段に持ひつさげたる心にして敵の打かくる所を下より手をはる也手をはる所を亦敵はる太刀を打落さんとする所をこす拍子にて敵打たるあと二のうでを横にきる心也下段にて敵の打所を一度に打留る事也下段の構道をはこぶにはやき時も遅き時も出合もの也太刀を取て鍛錬有るべき也

一二 一 おもて第四の次第の事

第四の構左の脇に横に構へて敵の打かくる手を下よりはるべし下よりはるを敵打落さんとするを手をはる心にて其儘太刀の道をうけ我肩の上へすぢかひにきるべし是太刀の道也又敵の打かくる時も太刀の道をうけて勝道也能々吟味有べし

一三 一 おもて第五の次第の事

第五の次第太刀の構我右の脇に横に構へて敵打かくる所のくらゐをうけ我太刀の下の横よりすぢかへて上段に振あげ上より直にきるべし是も太刀の道能知らん為也此おもてにてふりつけぬればおもき太刀自由にふらるる所也此五ツのおもてに於てこまかに書付る事に非ず我家の一通太刀の道を知り亦大形拍子をも覚え敵の太刀を見分る事先づ此五ツにて不㆑断手をからす所也敵と戦ひの内にも此太刀すぢをからして敵の心を受け色々の拍子にて如何様にも勝所也能々分別すべし

一四 一 有構無構 の数の事

有㆑構無㆑構と云ふは太刀を構ふると云事有べき事に非ずされ共五方に置事あれば構へ共成べし太刀は敵の縁により所によりけいきにしたがひ何れの方に置たり共其敵きりよき様に持心なり上段も時に随ひ少さがる心なれば中段となり中段を利により少あぐれば上段となる下段もおりにふれ少あぐれば中段となる両脇の構もくらゐにより少し中へ出さば中段下段共なる心なり然るに依て構は有りて構は無きと云ふ理也

先太刀を執ては何れにしてなり共敵を切ると云心也若敵の切る 太刀を受る はる あたる ねばる さはるなど云ふ事あれ共皆皆敵を切る縁也と心得べし受ると思ひはると思ひあたると思ひねばると思ひさはると思ふに依て切る事不足なるべし何事も切る縁と思ふ事肝要也能々吟味すべし

兵法大きにして人数たてと云ふも構也皆合戦に勝縁也いつくと云ふ事悪し能々工夫すべし

一五 一 敵を打に 一拍子 の打の事

敵を打つ拍子に一拍子と云ひて敵我あたるほどの位を得て敵のわきまへぬうちを心に得て其身も動かさず心も付ず如何にも早く直ぐに打拍子也敵の太刀ひかんはづさん打たんと思ふ心のなき内を打拍子是一拍子也此拍子能習得て間の拍子を早く打事鍛錬すべし

一六 一 二 のこしの拍子の事

二のこしの拍子我打たんとする時敵はやく引早くはりのくる様なる時は我打と見せて敵のはりてたるむ所を打ひきてたるむ所を打是二のこしの打也此書付斗にては中々打得がたかるべし教受ては忽合点のゆく所也

一七 一 無念無想の打と云事

敵も打ださんとし我も打ださんと思ふ時身も打身になり心も打心になつて手はいつとなく空より後ばやにつよく打事是無念無想とて一大事の打也此打度々出合打也能く習ひ得て鍛錬有べき儀也

一八 一 流水の打と云事

流水の打と云て敵相になりてせり合ふ時敵早くひかん早くはづさん早く太刀をはりのけんとする時我身も心も大きになつて太刀を我身のあとよりいかほどもゆるゆるとよどみのある様に大きにつよく打事也此打習ひ得ては慥に打よきもの也敵の位を見分る事肝要也

一九 一 縁 のあたりと云事

我打出す時敵打とめんはりのけんとする時我打一ツにしてあたまをも打足をも打太刀の道一ツを以て何れなり共打所是縁の打也此打よくよく打習ひ何時も出合打也細々打合ひて分別有べき事也

二〇 一 石火のあたりと云事

石火のあたりは敵の太刀と我太刀と付合ほどにて我太刀少もあげずしていかにもつよく打也是は足もつよく身もつよく手もつよく三所を以て早く打べき也此打度々打習はずしては打がたしよく鍛錬すれば強くあたるもの也

二一 一 紅葉 の打と云事

紅葉の打敵の太刀を打落し太刀取なをす心也敵前に太刀を構へ打んはらんうけんと思ふ時我打心は無念無想の打又石火の打にても敵の太刀を強く打其儘あとをねばる心にてきつさきさがりにうてば敵の太刀必ず落るもの也此打鍛練すれば打落す事やすし能々稽古有るべし

二二 一 太刀にかはる身と云事

身にかはる太刀共いふべし惣て敵を打身に太刀も身も一度には打ざるもの也敵の打縁により身をばさきへうつ身になり太刀は身にかまはず打所也若は身はゆるがず太刀にて打事は有れ共大形は身を先へ打太刀をあとより打ものなり能々吟味して打習ふべき也

二三 一 打とあたると云事

打と云ふ事あたると云事二ツ也打と云ふ心は何れの打にも思ひうけて慥に打也あたるは行あたる程の心にて何と強うあたり忽ち敵の死る程にても是はあたる也打と云ふは心得て打と云所也吟味すべし

敵の手にても足にてもあたると云ふは先あたる也あたりて後を強く打たん為也あたるはさはる程の心能習得ては各別の事也工夫すべし

二四 一 しうこう の身と云事

秋猴の身とは手を出さぬ心也敵へ入身に少しも手を出す心なく敵打前身をはやく入心也手を出さんと思へば必ず身の遠のくものなるに依て惣身をはやくうつり入心也手にて受合する程の間には身も入やすきもの也能々吟味すべし

二五 一 しつこう の身と云事

漆膠とは入身に能付てはなれぬ心也敵の身に入時頭をもつけ 身をもつけ 足をもつけ強く付所也人毎に顔足は早く入れども身ののくもの也敵の身へ我身をよく付け少しも身のあひのなき様につくもの也能々吟味有るべし

二六 一 たけくらべと云事

たけくらべと云は何れにても敵へ入込時は我身のちぢまざる様にして足をも延べ腰をものべ首をも延べて強く入敵の顔と顔とをならべ身のたけをくらぶるにくらべ勝と思ふ程高くなつて強く入所肝心也能々工夫すべし

二七 一 ねばりをかくると云ふ事

敵も打かけ我も太刀打かくるに敵うくる時我太刀敵の太刀に付てねばる心にして入也ねばるは太刀はなれがたき心余り強くなき心に入るべし敵の太刀につけてねばりをかけ入時はいか程も静に入ても苦しからずねばると云事ともつるると云事ねばるは強くもつるるはよわし此事分別有べし

二八 一 身のあたりと云事

身のあたりは敵のきはへ入込て身にて敵にあたる心也少し我顔をそばめ我左の肩を出し敵の胸にあたる事我身をいか程も強くなりあたる事いきあい拍子にてはづむ心に入べし此入る事入習得ては敵二間も三間もはねのく程強きもの也敵死入ほどもあたる也能々鍛錬有べし

二九 一 三ツのうけの事

三ツのうけと云は敵へ入込時敵打出す太刀をうくるに我太刀にて敵の目をつく様にして敵の太刀を我右の肩へ引ながして受るべし亦つきうけと云ひて敵打太刀を敵の右の目をつく様にしてくびをはさむ心につきかけて受る所又敵の打時短き太刀にて入に受る太刀はさのみかまはず我左の手にて敵のつらをつく様にして入込む是三ツのうけ也左の手をにぎりてこぶしにてつらをつく様に思ふべし能々鍛錬有べきもの也

三〇 一 面 てをさすと云事

面をさすとは敵太刀相になりて敵の太刀の間我太刀の間に敵の顔を我太刀さきにて突く心に常に思ふ所肝心也敵の顔を突く心有れば敵の顔身ものるもの也敵をのらする様にしては色々勝ち所の利有能々工夫すべし

戦の内に敵の身のる心有てははや勝所也夫によつて面をさすと云事忘るべからず兵法稽古の内に此利鍛錬有べきもの也

三一 一 心 をさすと云事

心をさすと云は戦の内にうへつまりわきつまりたる所などにてきる事何れもなりがたき時敵をつく事敵の打太刀をはづす心は我太刀のむねを直に敵に見せて太刀を刀先ゆがまざる様に引とりて敵のむねを突く事也若我くたびれたる時か又は刀のきれざる時などに此儀専ら用ゐる心也能々分別すべし

三二 一 かつとつ と云事

喝咄と云は何れも我打かけ敵をおつこむ時敵また打かへす様なる所下より敵を突く様にあげて返しにて打事何れも早き拍子を以て喝咄と打喝と突あげ咄と有心也此拍子何時も打合の内には専ら出合事なり喝咄のしやうきつさきあぐる心にして敵を突と思ひあぐると二度に打拍子能く稽古して吟味有るべき事也

三三 一 はりうけと云事

はりうけと云は敵と打合時とたんとたんと云ふ拍子になるに敵の打所を我太刀にてはり合せ打也はり合する心はさのみきつくはるには非ず亦うくるに非ず敵の打太刀に応じて打太刀をはりてはるより早く敵を打事也はるにて先をとりうつにて先をとる所肝要也はる拍子能合へば敵何と強く打ても少しはる心有れば太刀先の落る事に非ず能習得て吟味有べし

三四 一 多敵 の位の事

多敵の位と云ふは一身にして大勢と戦ふ時の事也我刀脇差をぬきて左右へひろく太刀を横にすてて構る也敵は四方よりかかる共一方へおひまはす心也敵かかる位前後を見分て先へ進む者に早くゆき合ひ大きに目を付て敵打出すくらゐを得て右の太刀も左の太刀も一度にふりちがへて行く太刀にて前の敵を切り戻る太刀にて脇に進む敵を切る心なり太刀を振り違へて待事悪し早く両脇の位に構へ敵の出たる所を強く切込みおつくづして其儘又敵の出たる方へかかりふりくづす心也いかにもして敵をひとへにうをつなぎにおいなす心にしかけて敵のかさなると見えば其儘間をすかさず強くはらひこむべし敵あひこむ所ひたと追まはしぬればはかのゆきがたし

又敵の出るかた出るかたと思へば待心有りてはかゆきがたし敵の拍子をうけてくづるる所を知り勝事也折々相手を余り多くよせ追込付て其心を得れば一人の敵も十二十の敵も心やすき事也能稽古して吟味有るべき也

三五 一 打あひ の利の事

此の打あひの利と云事にて兵法太刀にての勝利を弁ふる所也こまかに書しるすに非ず能稽古有りて勝所を知るべきもの也大形兵法の実の道をあらはす太刀也

口伝

三六 一 一ツの打と云事

此一ツの打と云心をもつて慥に勝所を得る事也兵法能学ばざれば心得がたし此儀能鍛錬すれば兵法心の儘になつて思ふ儘に勝道也能々稽古すべし

三七 一 直通 の位と云事

直通の心二刀一流の実の道をうけて伝ふる所也能々鍛錬して此兵法に身を為す事肝要なり

口伝

三八 後書

右書付る所一流の剣術大形此巻に記し置事也兵法太刀を取て人に勝事を覚ゆるは先五ツの表を以て五方の構を知り太刀の道を覚えて惣体自由になり心のきき出て道の拍子を知りおのれと太刀も手さへて身も足も心の儘にほどけたる時に随ひ一人に勝ち二人に勝ち兵法の善悪を知る程になり此一書の内を一ケ条一ケ条と稽古して敵と戦ひ次第次第と道の利を得て不㆑断心に罹いそぐ心なくして折々手に触れては徳を覚え何れの人共打合其心を知つて千里の道も一足づつ運ぶなり緩々と思ひ此法を行ふ事武士の役也と心得て今日は昨日の我に勝ちあすは下手に勝ち後は上手に勝と思ひ此書物の如くにして少しも脇の道へ心のゆかざる様に思ふべし縦ひ何程の敵に打勝ても習ひに背く事に於ては実の道に有べからず此利心にうかびては一身を以て数十人にも勝心の弁へ有べし然る上は剣術の智力にて大分一分の兵法をも得道すべし千日の稽古を鍛とし万日の稽古を錬とす能々吟味有べきもの也正保二年五月十三日新免武蔵寺尾孫之丞殿寛文七年二月五日寺尾夢世勝延花押山本源助殿

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