空の巻 · Livro do Vazio 五輪書 · Capítulo 6 de 6
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空の巻 · Livro do Vazio

一 (段)

二刀一流の兵法の道空の巻として書顕はす事空と云心は物毎のなき所しれざる事を空と見たつる也勿論空はなき也有所を知りて無所を知る是則空也

世の中に於てあしく見れば物を弁へざる所を空と見る所実の空には非ず皆迷ふ心也此兵法の道に於ても武士として道を行ふに士の法を知らざる所空には非ずして色々迷有りてせんかたなき所を空と云なれ共是実の空にはあらざる也武士は兵法の道を慥に覚え其外武芸を能つとめ武士の行ふ道少しもくらからず心の迷ふ所なく朝々時々におこたらず心意二ツの心をみがき観見二ツの眼をとぎ少もくもりなく迷ひの雲の晴たる所こそ実の空と知るべき也

実の道を知らざる間は仏法によらず世法によらずおのれおのれは慥なる道と思ひよき事と思へ共心の直道よりして世の大かねにあはせて見る時は其身其身の心のひいき其目其目のひずみによつて実の道にはそむくもの也其心をしつて直なる所を本とし実の心を道として兵法を広く行ひ正しく明らかに大きなる所を思ひとつて空を道とし道を空と見るべき也

空有㆑善無㆑悪智は有也利は有也道は有也心は空也正保二年五月十二日新免武蔵寺尾孫之丞殿寛文七年二月五日寺尾夢世勝延花押山本源介殿

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